「地球冷却微生物を探せ」プロジェクトに参加して考えたこと

参加するきっかけ

農業をしていると、朝畑へ出かけてから、夕方家に帰ってくるまで誰とも会わない日も少なくありません。ぶどうを栽培していると収穫して販売するのは年に一度です。ぶどうの感想を聞けるのも年に一度となります。就農してしばらく経つ頃、農業は社会との接点が少ない職業なのかもしれないなと感じはじめました。

同時に、自分一人の力ではままならないことが社会で多く起きているようにも感じていました。なにか農家として社会との接点をもう少し持つことが出来ないかと思っていたときに、こちらの地球冷却微生物を探せプロジェクトのことを知りました。農業は自然の恩恵を受けた営みだと思いますが、自然への負担もかけているのではないかと考えていました。少しでも未来の環境を守るためにお役に立てればと参加しました。

地球冷却微生物とは?

はじめに地球冷却微生物と聞いたとき、冷たい冷気を出す微生物を探しているのかと思いました。ですが、そうではありませんでした。

温室効果ガスである$\ce{N2O}$(一酸化二窒素)を消去する微生物を探しているそうです。

『図説 窒素と環境の科学 人と自然のつながりと持続可能な窒素利用』によると、窒素は農作物の生育には必須であるが、作物が利用できる形態にする必要があり、ハーバー・ボッシュ法によってそれが可能となったことで農作物の生産が大幅に増加したそうです。農作物の増産と引き換えに、窒素の利用が増え、温室効果ガスも増えることになったようだとわかりました。窒素を利用しなければ温暖化は抑えられるかもしれないが、十分な食料を生産出来ず飢餓がおこってしまう。そのバランスを調整するための微生物を探そうというプロジェクトでした。

実験をやってみて

ぶどう畑の土を瓶に密封し、最初の空気と瓶内で時間が経過したときの空気をそれぞれ採取して送り返すところまでが実験です。空気の分析と土壌の分析は地球冷却プロジェクトがやってくれます。一度の申込みで4箇所の土を調べる器具が入っているので、標高や植生が違うぶどう畑の土を採取しました。

気体の分析結果とともに、微⽣物叢の分析結果もいただけるそうなので、ぶどう畑に住んでいる微生物の状態を知ることが出来るようで楽しみです。

届いた実験の器具は理科の授業で使われるようなもので、小学生くらいのお子さんと科学や環境への関心を高めながら一緒に出来る実験ではないかと思います。農家でなくてもどなたでも参加出来ますので、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

小さな家族経営の農家なので、自身の生活を営みつつ出来ることは限られているのですが、無理のない範囲で今後もこのような社会的な取り組みに参加していけたらと思います。

地球冷却微生物を探せプロジェクト

ぶどう畑で考えていること

最近は剪定を続けています

年が明けてしばらく経ちますが、去年の12月から引き続き剪定をしています。今年は例年に比べて寒さも厳しく雪も多いので、無理をせず暖かい日に畑に出ていくことにしています。ゆっくりではありますが、2月末までには終わる見込みです。繁忙期の6月7月に比べると作業の期限が一日単位ではないので余裕をもって進められています。

就農して5年目となり、剪定も5度目です。これまで通り続けたほうが良いことや、改めて見直したほうが良いことが出てきたりと、今まで気づかなったような新たな気付きが日々あります。剪定は、秋にぶどうが大きく甘くなるために行う作業です。ぶどうの葉に十分な日が当たるかを気にかけて、これから伸びてくる枝が重ならないようにしないといけません。年が明けてまだまわりは雪に囲まれている中で、収穫の状態を思い描きながら剪定するのは、なかなか想像力が必要な仕事です。

同時に樹も育てています

剪定は短期的に見ると、良いぶどうを収穫するためのものですが、長い目で観た場合、樹作りをしていることにもなります。ぶどう畑には棚があり、その上にぶどうの樹は広がっています。ぶどうをたくさんとるためには棚全面にぶどうが広がってくれるのが理想的です。ですが、ただ枝を切っているだけでは思ったとおりに棚を覆い尽くしてはくれません。思い通りの方向に樹が広がるように剪定をしてあげる必要があるのですが、これが奥が深く、うまく樹勢を落ち着けながら思い通りの樹に育てていくのは至難の業です。ぶどう栽培の技術は蓄積されて広く共有されていますが、気候や土壌などさまざまな要因があり、自分の土地にあう納得のいく剪定ができるには、まだ時間がかかりそうです。

収穫までのスケジュール

例年通りにいけば、4月下旬には発芽をし始め、6月10日前後に満開となります。この頃は日々ぶどうが急速に生育していく時期で一日も無駄にできません。ぶどうの生育に追いつくように作業を進めなければいけないため一番の繁忙期となり、7月末に袋掛けが終わるまで一息つく暇もありません。袋掛けを終えればお盆まで少しだけ余裕ができ、暑い時期に少し体を休めることができます。お盆を過ぎて早ければ8月末から巨峰の収穫が始まり、9月上旬から中旬にかけてナガノパープルの収穫、9月下旬か10月初旬からシャインマスカットの収穫と、それぞれの品種の旬にあわせて10月の終わりほどまで収穫が続いていきます。

このように今後のぶどうの生育状況を起点として、作業予定を組んでいます。そのため、まだ年があけたばかりではありますが、収穫時期のぶどうのことを考えながら、寒い中剪定をすすめています。